呉屋日記

勝連繁雄先生の一弟子・平良が、好きなことを好きなようにつづる日記

「琉歌を作る①」

今月、普段お世話になっている先輩からの依頼により、とある祭りの幕開け斉唱をすることになった。

北中城村の石平(いしんだ)という地域の、川沿いに植えられている桜の咲く時期に合わせて開催する「桜小路(さくらこみち)まつり」。始まってから、今年で10回目を迎えるという。

例年幕開けを担当している地域の古典研究所の先生が、今年は別の予定があってまつりに参加できないらしく、私たちに話が回ってきた次第。

幕開け斉唱のメンバーは、私を含めて4名予定(私の研究所のメンバー計3名プラス胡弓担当の仲間1名)。

斉唱3曲のうち1曲目は「かぎやで風節」で、それ以外の2曲をどの曲にするかは、私たちが決めて良い。

そしてできれば「かぎやで風節」は、その先輩自身が地元・石平のことを詠んだ歌の歌詞に変えて歌ってくれないかということだったので、了承。

そこで2、3曲目を何にするか、検討。

2曲目は斉唱でよくやる「恩納節」にして、3曲目は「ごえん節」がいいか。

でも、「恩納」節かー、せっかく「石平」という地域限定のまつりなのに、ピンポイント、恩納村のことを歌った歌詞でやるのは少しもったいないから(そうしても別に全く問題ないのだけど)、パロディ的に、歌詞の一部「恩納」を「石平」に変える?

でも、「恩納」を「石平」に変えたとて、続く「松下」なんて石平にはない(むしろ「松」じゃなくて「桜」なんだけど、みたいになる)けどどうすんの、と考えたとき、思いついた。

「歌詞、もう全部自分で作ったほうがよくないか?」と。

そこで先輩に、「恩納節」の歌詞(=琉歌)を今回のまつりのために私が作ります。一週間で作れなかったら断念するけどどうですか?と聞き、OKをもらったため、作成スタート。

 

※ここで参考・・・

「恩納節」

恩納松下に 禁止の牌のたちゅす 恋忍ぶ迄の 禁止やないさめ

歌意:恩納村の松下に禁止事項を書いた立札があるが、恋愛することまで禁止しているわけではないだろう。

(「改訂 歌三線の世界」勝連繁雄著/2003年 ゆい出版 より)

 

 

「桜まつり」なので、「桜」を歌詞に登場させるのは必須か。

そして「桜」を思い浮かべる際、まず目に入ってくるのが花の色、ということだからなのだろうか。歌作りをスタートしたとき、ぱっと頭に浮かんだのは、最初の8音に「サクラ(桜)イル(色)ヂュラサ(きよらさ)」(直訳→「桜の色がきれい」)というのはどうか?ということだった。

だがすぐに、「イルヂュラサ」との言い回しが出てくる別の、たとえば「いちゅび小節」で、歌詞「月ん照り美らしゃ 無蔵も色美らしゃ~」(ツィチンティリヂュラサ(シャ) ンゾンイルヂュラサ(シャ)~ 歌意→月が照ってきれいだ。彼女もきれいで色気がある)となっていることから考えると、「サクライルヂュラサ」という表現は、純粋に「桜の色がきれい」ではなく「色気のある桜」という風に解釈される可能性も出てきてしまう。

となると、私が歌に込めたい意図とは合わなくなるので、却下。

 

(つづく→)