呉屋日記

勝連繁雄先生の一弟子・平良が、好きなことを好きなようにつづる日記

2022年の出来事(4)

先生と、面と向かって話したこと。

一番印象に残っている場面は?と、聞かれても分からない。

先生はいつ、私を何と呼んでいただろう。

(「君」?「お前」?「ゆかり」?・・・・全部だな。)

 

 

先生を思い出す時、行きたくなる場所がある。

本島南部の、とある海沿い。

夜中、しーんと静まり返った中で、真っ暗な、海をのぞむ道路を車で走る。

片道一車線の、ところどころのカーブを抜けていくうちに、比較的ゆるやかな、少し幅の広い道に出る。

一点の、岬を見上げられる場所に辿り着く。

 

通過しながら思い浮かべる。

真っ暗な夜空。その岬の端のほうか。

遠くの、ぽつり、小さな灯を眺める私。

横に、先生。

先生は、三線を弾き、歌い、ときどき休み。

目線をまっすぐ前にそのまま。

あたたかく、いつものように、ふっと、つぶやく。

「明るいねぇ」

 

実際に、先生と一緒にその場所に行ったことは一度もない。

私はいつも一人車に乗り、その場所を見上げられるところから、ちらりとそこを通りすぎるだけ。

けれどもそこを通るたびに、先生とふたり並んだ風景が浮かぶ。

同じことを、先生が今この瞬間に、思っているかのような感覚になる。

幾度となく聞いた覚えの声がする。

「弾いてみるか、由佳梨」。

 

 

私がこれから生きていくということは、そういうことだと思う。

 

 

大切な仲間、人々に囲まれて、日々は続く。

刻々と、いつの間に過ぎる年月を重ねる中で力になるのは、

ふと立ち止まり、思い浮かべ、記憶に刻む日々。

書くことで、強固になる思い。

いつまで続くか分からない道のり。

 

先生の声が聞こえる。

語る。応える。

私はどれだけ、善い行いをしたというのかな。

先生と出会えたこの喜びは、どうして手に入ったんだろう。

 

生きる。感じる。

悲しめることも幸せ。

包み、守られる。

誰にも消せない、私がいる限り。

 

いつもいる。見える。

伝える。伝わる。

他も、ひとつに、つながっている。

 

表現を、やめたくない。