呉屋日記

勝連繁雄先生の一弟子・平良が、好きなことを好きなようにつづる日記

2022年の出来事(3)

組踊の稽古が始まった。

9月に初めて、組踊の舞台の地謡をすることになった。

先生は組踊のことをよく知っているのに、私は一度も組踊をやったことがない。

演目が「執心鐘入」と聞いて、初心者の私にでも入りやすく、良い機会をもらったと感謝した。

 

ありがたい、と引き受けたところ、稽古をはじめるとすぐにたくさんの疑問が湧いた。

どうしてこの歌詞なのか。解釈は?

歌い方はこれでいい?駄目?

先生がいればすぐに答えが分かるのに、と何度も思った。

けど、言っても始まらない。調べ、他の先生方にも教えてもらいながら、とにかく稽古することにした。

 

そういえば、と、私が自分の研究所を開設したそもそもの理由を思い出した。

私が研究所を始めた理由の一つが「教えることで、分からないことを明確にしたい」というものだった。

習っているだけでは気づかない、教える立場になってはじめて知る、自分の弱点やあやふやな部分を見つけ、先生に聞けるうちに聞いておくべきだと考えたから。

教え、壁にぶち当たったときの先生の対処法のようなものも学べたら、と思ったからだった。

けれど組踊に関して私は、教えるどころか挑戦することさえ初めてで、

先生がいた頃は「私もいつかは組踊を」と、なんとなく思うだけだった。

「いつかは」のその日が、今になって来た。

遅いか早いか。どちらにしても、挑戦できたこと自体に意義があると思いたい。

 

舞台本番の日。

結果、一応無事にこなすことができた。

そして、この舞台でひとつ印象深かったことは、

今年になって初めて、一緒に地謡を務めた仲間と明るくおしゃべりができるようになっていた、ということだ。

1月の独唱の舞台の時は、ただ出番をこなしただけ。暗く悲しい気持ちが大きかった。

あのときの舞台での出来事、共演者と話した記憶もあまりない。

けれど今回は違った。

稽古する気持ちも湧いた。

舞台のあとの達成感もあった。

毎週の研究所の稽古があるおかげかと思う。毎週会って、先生がいた頃の雰囲気を感じるようになったから。

そして、先生も知っている、明るく話せる三線仲間は、研究所の中にも外にも何人もいるのだと、今回改めて思い知らされた。

 

ありがたいことが多い。

そんな風に、日々を過ごしている。